ガンダムビルドダイバーズワールドチャレンジ ジムとボールの世界に挑戦!

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「All The Things She Said 〜 アタシらの言うことがすべてよ 〜」

「ピクニック・ゼロワンよりゼロスリー! ゼロナイナー! 隊形を立て直す! 現在座標を送れ!」

 フォースリーダーの呼びかけはもはや叫び声になっている。それでも返事は戻ってこない。これでメンバーのほとんどが撃破されたことになる。

「フォース・ピクニック、残存3機! 皆のフォースは!?」

「フォース・フェイスフルドッグ! 残り4!」

「希望の夜明け! 残存3だ! くそったれ!」

 その他のフォースからも悲鳴のような報告があがってくる。どこも似たような状況らしい。バトルフィールドに残ったガンプラの数は、スタート時には50機は下らなかったはずだが、もはや半数ほどに削られていた。

 たった一体のキュベレイの手によって。

 それでもいま、キュベレイは追い詰められようとしていた。もとはといえばバトルロイヤル形式でスタートした今回のガンプラ・バトルだったが、ライバル同士として腕を競い合っていたフォースの生き残りたちが、いまは共通の敵を前に手を取り合い、いまいましき悪魔を葬り去ろうと血眼をひとつにしている。

 フィールドは、荒廃した都市を模していた。かつては栄華の象徴として林立していたであろう超高層ビルの群が、無残にも複雑に折り重なり、絡まり合うようにくずおれている。その巨大な迷路のなかを、禍々(まがまが)しくカスタマイズされたキュベレイが、ひとつの群れになったガンプラたちからの激しい砲火に追い立てられてゆく。

 巨大なドーム球場が行き止まりだった。

「すこしばかり目立ちすぎたな」

 キュベレイが振り返る。追い詰めた一群のなかで、フリーダムガンダムを操るダイバーが、皆を代表するかのごとくニヤリと言った。

「バトルロイヤル形式のフォース戦に、単騎で乗り込んでくるとは、根性は認めてやる。だが……万事休すだ」

 表情が溜飲を下げる。屈辱を一気に晴らそうとするかのようにフリーダムが、バラエーナプラズマ収束ビーム砲、クスィフィアスレール砲、ルプスビームライフルの全砲火をフルバーストで放とうとした──その時、

「誰がひとりだって言ったかしら?」

 キュベレイから、キュートな声が発せられた。

「……女!?」

 フリーダムのダイバーは驚き、そして、一瞬遅れて、彼女の言葉の意味を理解した。

「仲間がいるのか!?」

 次の瞬間、フリーダムの胴体が彼方から届いたビームに貫かれた。続いてまわりにいたガンプラたちも次々と打ち抜かれる。

「スナイパー!」

 絶叫とも思える警告、キュベレイを追い詰めていたガンプラたちはいっせいに身を隠そうとした。しかし、襲い来るビームライフルは、目を見張るテクニックで彼らを逃さず打ち抜いていく。いいや、驚くのは射撃の正確さだけではない、スナイパー・ライフルとは思えない恐るべき威力。ザク・キャノン、ジンクスⅢ、ギラ・ドーガ、エトセトラ、エトセトラ……さらには倒れた高層ビルの陰に隠れたガンプラたちにすら、残骸を貫通したビームが命中する。

 ダイバーの一人が愛機サザビーのモノアイを射線の先へ向けた、ズーム(倍率)を最大に上げる。遙か彼方でかろうじて倒れず残っている電波塔、展望台の上、膝射ちの姿勢で見たこともないライフルを構えていたのは、研ぎ澄ましたナイフのように鋭くカスタムされた、灰銀色に輝く──

「百式!」

 すかさずライフルの砲口がこちらを向く、発砲、着弾。

 叫び声もろともサザビーはのけぞり背後に吹き飛んだ。

「退避だ退避!」

 もはや数えるほどにまで減ったダイバーの一人が絶叫する。

「この場に留まると一機残らず血祭りにされるぞ!」

 慌てて唯一の逃げ道──もと来た進路へ踵を返そうとしたガンプラたちの前に、狙撃の混乱に乗じて位置を取ったキュベレイが立ちはだかっていた。

「あら、逃がさないわ。いちいち一機づつ追っかけて潰すの面倒だから、わざわざ全員、一箇所に集めたんですもの」

「誘い込んだってのか!?」

 唖然とおののくガンプラたちに、キュベレイの鋭い爪が無慈悲に襲いかかった。それでもなんとか場から這いつくばり逃れたガンプラを、見逃さず百式が容赦なく狙い撃っていく。そして──

「50機以上いたんだぞ……それを、キュベレイと百式……たった二体で、しかも……五分とかからず……」

 ついに最後のダイバーが、断末魔の声を漏らした。

 まさに阿鼻叫喚の巷(ちまた)と化した様相に、キュベレイのダイバーが、まるでサーカスでおどけるピエロを見るように、かわいい表情をくるくるさせ大笑いした。

 そんなキュベレイの隣に、飛びきた百式が降りたつ。

「…………つまんねぇ…………」

 甘いキャンディーの香り漂う百式のコクピットで、目鼻立ち整ったダイバーが、顔に似合わない悪態をぼそり、ロリポップをくわえたまま吐き出した。

「あらマーキーったら、レディがそんな言葉使い、いけないことよ」

「…………ノズの方こそ、そのネコかぶったしゃべり方、虫酸が走る…………」

 ノズがうふふとひとつ笑い──キュベレイが、なにやら足もとに転がっているガンプラを掴み、パーツとパーツを繋いでいる可動部分を一箇所ずつ、もぎってちぎりはじめた。百式も続く。

 撃破されたガンプラ達は、消失しないギリギリの寸止め状態の屍とされている。それらすべてのガンプラの関節をもぎってちぎるには、撃破した時の倍以上の時間がかかった。最後の一本、ジェスタの右足をちぎったキュベレイは──ノズは、ギリリと奥歯を噛みしめると、

「こんだけガンプラがいて、なんで見つかんないわけ……?」

 その足を、力の限りぶん投げ捨てた。

「ざけんな……いったいドコにあんだよ! 黄金に輝くポリキャップってやつ!」

 ノズは、打って変わった怒声をあげると、苛立ちを叩きつけるかの如く上空高くにファンネルを一基打上げ、地に散らばるガンプラの残骸に向けて放ち焼き払った。大きく起ちあがった爆炎を背に、百式とキュベレイが場をあとにする。

「…………うん、やっぱそっちの方が、ノズらしい…………」

 コクピットでマーキーは、小さく微笑んだ。